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慶應義塾

塾长室だより No. 14 NATO事務総長と国連総会議長の来塾 ?"人間"と"国家"と"地球"の安全保障?

公开日:2023.02.27

庆应义塾长 伊藤公平

2023年2月1日、北大西洋条約機構イェンス?ストルテンベルグ事務総長(NATO Secretary-General H. E. Mr. Jens Stoltenberg)が三田キャンパスにお越しになり、講演に加えて、教員や塾生との実にダイナミックな質疑に応じてくださいました。(注1)会場を埋めつくした塾生が一斉に挙手して繰り出した英語での質問は実に多彩で、学術的なものからNATOに批判的な内容まで含まれる直球勝負でした。これに対し、政治家としてノルウェー首相も務められたストルテンベルグ事務総長は、実に丁寧にすべての質問に回答してくださいました。講演?パネル?質疑応答の全貌は是非をご覧ください。

ストルテンベルグ事务総长の议论は実に焦点が绞られた见事なものでした。人间の安全保障という侧面からはウクライナ一般市民の人権が着しく损なわれていることをあげ、国の安全保障の侧面からは、大国が自己都合で他の主権国家を武力によって乗っ取ることを野放しにすることは絶対に许されないと强调しました。

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また、ウクライナ国民の勇敢さを称え、狈础罢翱としての惜しまぬ支援を明言し、それに対する日本の协力を求めました。そして「欧州で今起こっていることが、明日、东アジアで起きる可能性がある」と述べました。台湾有事のことです。塾生たちは、この时、いろいろなことを考えたことでしょう。台湾民众の人権が着しく损なわれていく场合には、军事面も含めて日本は助けに行くべきだろうか。しかし、平和国家日本は、纷争の解决の手段としての武力行使を放弃している。そもそも日本は台湾を独立国家として认めていないので、中国の内戦と位置付けたときに、どのような対応が相応しいのか。台湾侵略はそのまま日本の安全保障の危机に结びつくのか。そもそも狈础罢翱がなぜそのようなメッセージを日本国民に伝えているのだろう。狈础罢翱と日本が连携を强めるとすれば、その目的や利点や不利益は何か。

会場において私もいろいろと考えました。特に焦点をあてたのは人間の安全保障と、国の安全保障のバランスです。福澤先生が「一身独立して、一国独立する」と『学問のすゝめ』に記されたとおり、慶應義塾の考え方は、あくまでも主権者は国民一人ひとりであり、その国民の独立や尊厳に基づき、独立した良い主権国家を民主的に築いていこうというものです。人間の安全保障を日本や世界で確保し続けるために、正しい経済活動や外交活動に勤しむということです。国家や君主が優先されてはなりません。一身の独立に基づく独立国家が成立してこそ、外交においても存在感をもった貢献ができます。人間の安全保障を重視した世界の発展に寄与できます。しかし、そのうえで、私たちの安全保障や、国の安全保障が武力によって一方的に脅かされる場合にも備えなければなりません。 『学問のすゝめ』 初編には「国の恥辱とありては日本国中の人民一人も残らず命を棄てて国の威光を落とさざるこそ、一国の自由独立と申すべきなり」という一文があります。人間の安全保障を最優先した国家論を展開し、外交努力を尽くし、そのうえでの最悪の事態に備える必要があるのか。ストルテンベルグNATO事務総長は塾生や私たちに実に多くの課題を提示してくださいました。

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それから2週間おいた2023年2月16日、チャバ?コロシ第77回国連総会議長(H.E. Mr. Csaba K?r?si, President of the 77th session of the United Nations General Assembly)をお迎えして「折り返し地点に立ち:SDGs達成プロセスの加速へ向けて」と題したシンポジウムが開催されました(注2)。コロシ氏は2014年の「国連:SDGsに関するオープンワーキンググループ」の共同議長を務められた方で、2015年9月の国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を加盟国による全会一致の採択に導いた立役者です。今年2023年は、2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた折り返し点ということで、進捗状況の中間評価の年となります。SFC研究所xSDGラボ?コンソーシアムの代表で大学院政策?メディア研究科教授の蟹江憲史さんがホスト、ジャーナリストで特任教授の国谷裕子さんがモデレータとして、田中明彦国際協力機構(JICA)理事長もお迎えして塾生たちとの濃密な質疑応答が展開されました。

コロシ議長は、人世紀(Anthropocene)という枠組みで地球環境悪化が大きく加速する(great acceleration)なかにおいて、私たち人類の対応が全く追いついていない惨状を解説され、変化ではなく変革(transformation)が必要なことを力説されました。特に強調されたのが、一国の政策や活動が他国に及ぼす影響についてよく吟味することの重要性でした。そして出来る範囲での努力ではなく、2030年のゴールを達成するために必要な道筋を明らかにしながら、そのために必要なルールを人類が結束して作るべきと話されました。しかし、このルール作りに時間を要しては意味がありません。2030年へのロードマップを達成するためのルールですから、スピーディーに皆の合意のもとでアップデートし続けて、私たち全員が最新のルールを守ることが必要です。このルールメーキングに参加することこそが次の世界を先導するということになるのでしょう。「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を単なる案としてまとめたのでなく、それを国連加盟国による全会一致まで導いたコロシ氏のリーダーシップは想像を絶するレベルであり、そのような先導者が2030年に向けた危機感を真剣に語る姿に会場の全員が胸を打たれました。

厂顿骋蝉とは人间と地球の安全保障という概念であって、国の安全保障は隅に置かなければならないということです。国家安全保障という枠组みでは、国防に加えて経済なども议论されます。国防や経済となると、ある国の隆盛が他の国の衰退によって得られることもあるので、「谁一人取り残さない」という厂顿骋蝉の理念とは相いれません。ロシアによるウクライナ侵攻においては、大统领のロシアの安全保障のために多くのロシア市民が兵队として犠牲になっています。国や君主の安全保障のために人间の安全保障が蔑ろにされています。

人間の安全保障(Human security)という概念が世界レベルで認識されるようになった一つのきっかけはです。この活动は日本がイニシアティブをとったそうで、颁贬厂の初代共同议长には、绪方贞子氏とアマルティア?セン氏が就任しました。その绪方氏は后に闯滨颁础初代理事长に就任し、闯滨颁础研究所も创设しました。その研究所の叁本柱の一つが人间の安全保障です。绪方氏は皆に惜しまれながら2019年に永眠されましたが、氏の功绩を讃えて闯滨颁础研究所はと名称変更しました。その闯滨颁础を率いる田中明彦理事长は、人间の安全保障を轴とした国际协调を日本こそがリードすることを强く诉えていらっしゃいます。

塾生たちにとって、ストルテンベルグ狈础罢翱事务総长やコロシ国连総会议长との直接対话が人生の転机になるのではと私は期待しています。教育の目的は、若者に高い志と実行力を备えることです。梦と希望を与え、より良い社会を筑いてもらうことです。狈础罢翱事务総长は人间と国の安全保障、国连総会议长は人间と地球の安全保障についての危机感を语られましたが、お二人に共通していたのは、この挑戦を必ず乗り越えるという决意と、実际にそうなるであろうと我々に信じさせる论理性とカリスマ性です。皆で危机感を乗り越えて明るい社会を创っていこうという未来志向です。塾生たちのためにこれからも多くのオピニオンリーダーを世界から招く庆应义塾を目指したいと思います。

(注1)ストルテンベルグ事務総長の三田キャンパス講演会は、外務省からの相談を受けた総合政策学部?鶴岡路人准教授、法学部?細谷雄一教授、森聡教授らの尽力により、春雨直播app Global Research Institute(KGRI)の活動として実施されました。

(注2)コロシ议长の讲演会は、蟹江宪史教授の尽力により庆应义塾大学厂贵颁研究所虫厂顿骋ラボ?コンソーシアムが主催で六本木アカデミーヒルズで开催されました。その后、议长をお迎えした夕食会が叁田キャンパスで开催されました。