登场者プロフィール
井奥成彦
文学研究科 史学専攻 日本史学分野井奥成彦
文学研究科 史学専攻 日本史学分野
2016/11/30
私の近年の研究は、日本における在来产业とその経営主体の歴史的研究で、近代以前から存在する伝统的な产业がどのように日本の近代を生き抜き、今日に至っているかということに関心を持って、具体的な経営体の文书を分析しています。在来产业の中でも私がことに注目するのは、酒、醤油、味噌などを造る醸造业です。醸造业は、微生物を操るバイオ产业の一种であり、日本の気候?风土や日本人の繊细さ、勤勉さが相俟って、近世以降日本が世界をリードしてきた分野と言ってよいでしょう。そしてこれらの产物が、世界无形遗产に登録された「和食」を构成する重要な要素であることは言うまでもありません。つまりこの产业は、日本の食文化に欠かせない、我々日本人にとって、なくてはならない产业なのです。
日本の近代の产业では、早くから机械化を果たした绵糸纺绩业や外货获得に贡献した生糸製糸业などにスポットが当てられがちですが、酒の生产额が明治期日本の工业生产物の中で常にトップであったという事実はあまり知られていません。醸造业は近代に入っても、杜氏という技术者の経験や勘を必要とするゆえの机械化の难しさから、近世以来の手造りの製造方法で地味ながら规模を拡大して生产を伸ばしたのです。醤油は、その製品としての性质上、酒ほどの生产额はありませんでしたが、需要の増大と税制面での有利さなどから、莫大な利益をあげて大公司に成长する业者も现れ、明治末以降、その利益は徐々に机械化に振り向けられていきます。同时に、彼らの间では利益を社会に还元する倾向が强かったことは、私をこの产业の研究に惹きつける一因となっています。
近年、人口の减少もあって、酒も醤油も国内での消费量こそ头打ちですが、むしろ海外での评判が高まって输出が増加しており、また有力公司は次々に海外に工场を设けています。世界的に知られる某有力醤油メーカーなどは、欧米やアジアに多くの工场を持っており、国内生产量よりも海外での生产量の方が圧倒的に多いというのが実情です。味噌も、健康によいとの评判から、输出が増えています。
日本の歴史の中で育まれ、日本人が得意としてきた「ものづくり」を象徴するような产业である醸造业の世界展开は、世界経済の中で日本が活路を见いだしていく一つのヒントを与えてくれているような気がしています。
(2016/11/30)