登场者プロフィール
徳永聡子
徳永聡子
2025/04/01
プリンストン大学シャイデ図书馆にて同馆所蔵の『黄金伝説』を閲覧
现代社会ではスマートフォンやタブレット端末の普及が进み、読书の形态も多様化してきました。一方で、私たちが作品を享受するとき、それがどのような形态であっても、なんらかの媒体を介していることは普遍的です。作者が书いたものが読者や聴き手に届くまでには、それを「书物」として成り立たせる支持材料が存在します。また同じ作家の同じ作品であっても、标题纸や目次、挿絵の有无、书体や文字の大きさ、判型や形态など、书物によって特徴は异なります。さらにはメディアや时代の変化にともない、同じ作品のテクストが変わることも多々あります。つまり作品を読むということは、文字を辿って意味を抽出する行為にとどまりません。ロジェ?シャルチエのことばを借りるならば、「书かれたものの理解は、どんな场合でも、それが読者に达する际にまとう形态に部分的に依存する」のです(『书物の秩序』长谷川辉夫訳)。
このような問題意識を出発点として、私は中世英文学を书物文化史の観点から研究しています。具体的には、15世紀から16世紀初頭のイングランドにおいて、作品が写本や印刷本を媒介としてどのように生成され、伝播し、読者に受容されていったのかについて考えてきました。中世ヨーロッパの書物生産は手書きによるものが基本でしたが、15世紀半ばに入ると活版印刷術が登場しました。かつては活版印刷術の誕生は「印刷革命」と称され、写本文化とは分断的に捉えられていました。しかし初期の印刷本には中世写本の伝統が色濃く継承されています。私は両方を視野に入れ、それらをマテリアリティとテクストの面から分析し、書物生産の実際や作品受容の理解、書物を通して社会や宗教の変化を読み解くことを試みています。
現在は13 世紀後半にドミニコ会士ヤコブス?デ?ウォラギネが編纂したLegenda aureaの英訳版The Golden Legend(1483/4)を研究の主轴に据えています。欧米诸国とニュージーランドの図书馆に出かけて资料の调査を重ね、时にはデジタル技术も援用し、その成果の一部をイギリスから校订版としても出版します。こうした现地调査の过程において、海外の诸研究机関で多くの友人との出会いに恵まれたことも、私にとって大切な宝です。地道に事例研究を积み重ね、断片的だった情报を有机的に结びつけることで、写本と印刷本文化の併存?移行期における书物をめぐるネットワークを立体的に描き出していきたいと考えています。