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慶應義塾

歴史と文芸にみる「事実」と「真実」の位相

登场者プロフィール

  • 吉永壮介

    文学研究科 中国文学専攻

    吉永壮介

    文学研究科 中国文学専攻

2025/04/01

「天に二日无く、土に二王无し」(『礼记』)という言叶を嘲笑うかのように、叁世纪の中国には叁人の皇帝が并び立つ「叁国志」の时代が现出しました。日本では卑弥呼の时代にあたります。当时の「史実」は、ほぼ同时代史である晋?陈寿『叁国志』の本文に、南朝宋?裴松之の注を加えた形で现在に伝わります。その「史実」から様々な「物语」が派生して、実在の人物たちはキャラクター化してゆき、やがてそれらは明代の长编白话小説『叁国志演义』に集大成されます。

私は『叁国志演义』を主な対象として、以下の叁つのアプローチで研究をしています。

一つ目は、版本系统の比较研究(テキストクリティーク)です。明代の书肆が竞って出版した『叁国志演义』は、四十种を超える版本が现存しています。それらの版本を精査することで、「叁国志」の「物语」が辿り着いたアウトラインを把握することができます。

二つ目は、小説『叁国志演义』の成立史を辿ることです。「史実」に端を発する「叁国志」は、诗文、民间芸能、民间信仰、戯曲、地方志といった様々な分野で、数多くのストーリーやキャラクターを涵养してゆきます。时代とメディアを跨がる书籍の渉猟とともに、各地に伝わる伝承や郷土史を採集し、「叁国志」の受容史を复合的に构筑することを目指しています。

叁つ目は、受容史という视点を现代中国と日本にまで伸ばした延长线上にあります。小説、映画、罢痴ドラマ、マンガ、ゲーム、奥贰叠での二次创作まで、コンテンポラリーな「叁国志」の展开を追跡することによって、古典から现代への时代を超えた継続と断絶、中国と日本という地域を超えた継承と新たな创作というサブカルチャーの诸相をリサーチしています。

1800年间の长きにわたり、连绵たる受容と再生产の过程を有する「叁国志」という巨大コンテンツは、时代、地域、受容层(メディア)による多様なソートの可能性を提供してくれる膨大な素材の集积体です。叁つのアプローチには、いずれも「史実」と「虚构」の揺らぎへの関心が存在します。ときに歴史的な「事実」ではない「虚构」に、人々はいかにして切実な「真実」を託し、「物语」を育み続けてきたのか。私の研究志向の基干は、一つきりであるはずの「事実」に、様々な「真実」が付与されてゆく様相の探求にあります。