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2023年4月3日
庆应义塾长 伊藤 公平
新入生の皆さん、庆应义塾大学の大学院へようこそ。ご家族をはじめとする関係者の皆様にも心からお庆びを申し上げます。
まず初めに、庆应义塾の创设者?福泽諭吉が语った庆应义塾の目的を読み上げます。
「庆应义塾は単に一所の学塾として自から甘んずるを得ず。其目的は我日本国中に於ける気品の泉源、智徳の模范たらんことを期し、之を実际にしては居家、処世、立国の本旨を明にして、之を口に言ふのみにあらず、躬行実践、以て全社会の先导者たらんことを欲するものなり」
皆さんが、数多くある大学院の中から庆应义塾大学大学院を选んだ理由は様々であろうことを想像しますが、ただ今绍介した庆应义塾の目的はすべての塾生が共有すべき目标です。気品の泉源、智徳の模范としての高みを目指し、全社会、すなわち全世界を正しい方向に先导する、リードするために、皆さんはこれからの大学院生活において学问に励み、生涯の友、研究者仲间と出会っていきます。庆应义塾で出会う研究者は谁もが一流ですのでこれからの日々を楽しみにしてください。
さて、皆さんは「虫の目、鸟の目、鱼の目」という3つの目の使い方を闻いたことはありますか?この3つの目を、私は伊藤元重(もとしげ)氏の着书『経済を见る3つの目』で知ったのですが、今日の式辞では、これから庆应义塾大学大学院で研究や専门职に関する学びを始める皆さんのために、この叁つの目を私なりにアレンジしてお话しします。
1つ目の「虫の目」。これは専门を深く掘り下げる目です。皆さんは学者として自分の専门性を彻底的に高め、関连する学问を深掘りしていきます。我が国のみならず世界に散らばる同じ分野の専门家の论文や発表を逐一参考にしながら、自分の研究や学习を极めていきます。これが「虫の目」です。试行错误が続き、思うように研究が进まないこともあるでしょう。自分だけのオリジナルと思っていたら、学会等で他の人に先を越されそうになることを知って慌てることもあるかもしれません。でも皆さんは、その研究が大好きだからこそ大学院に进学するのですから、大好きな研究に集中する「虫の目」を駆使して、なりふり构わず、寝食を忘れて、无我梦中に自分の学问に没头してください。専门家としての実力を涵养するのが虫の目です。
2つ目は「鸟の目」です。高いところから全体像を俯瞰して、広范囲な学术の中で、自分の研究が「ここにあるんだな」と体系的に位置づける目です。庆应义塾は、一昨年、科学技术振兴机构の「次世代研究者挑戦的研究プログラム」に応募して採択されました。「未来社会のグランドデザイン描く博士人材の育成」というタイトルで、50年后の次の社会をどうつくっていくかを自ら考え行动にうつせる博士が巣立っていくことを目指したものです。庆应义塾のすべての14ある研究科が横につながり、価値创造、新技术创成、新社会创生を通した新しい総合知の创成を目指し、授业、セミナー、シンポジウムといった分野横断、分野融合の学びの场を用意し、大学院生が国际的に高いレベルで活动していくことを目指しています。そして、その担い手である博士课程の皆さんが伸びやかに活动できるように、生活费や研究费の援助を行っています。资金援助の対象は博士课程のみですが、この14の研究科のつながりは修士课程の学生にも多大な恩恵をもたらします。様々な研究科を横につなげる科目が作られ、自分の専门以外で、自分の専门以外の人に出会う机会が増えていくということです。社会科学、人文科学、理工学、医学、医疗のすべてを有する庆应义塾大学だからこそ、学术分野を総合的に俯瞰できるプラットフォームが作れるということです。皆さんは「鸟の目」を駆使して、自分の研究を、広い意味での学术の発展の中に位置付けていってください。そして「鸟の目」を駆使して、意义深く、创造的な研究テーマを提案していってください。
最后は「鱼の目」です。流れを判断する目です。虫の目や鸟の目で见るスナップショット、すなわち静的な写真とは异なり、动的な流れを见极める目です。ゼミ、研究室、教室、学会等で出会う様々な友人や教员との交流。旅行先や出张先での出会いで学ぶ新しい考え方とその动き。つまり、人间が形成する社会と、その生活の场である地球环境の変化といった流れを见极めるのが鱼の目です。社会の基本要素が人と人とのつながりであり、そのダイナミズムが社会の変化ですから、上手な人づき合いをとおして流れを见る目を锻える必要があります。人々の心に响くストーリー、物语を语るために必要な目です。福泽先生のおっしゃる人间交际であり、先导者になるための必要な目です。
ウクライナ情势を见てもわかるとおり、今、世界は大転换期にあります。私は物理学者ですが、これまでロシア、ベラルーシ、ウクライナのそれぞれから招かれ、3つの国の研究者たちと、文字通り国境のない物理学の议论を重ねてきました。今、政治的な理由により、この大切な仲间たちの人権が损なわれ、自由が夺われ、分断が进んでいることは、彼ら一人ひとりの个性と优しさと优秀さを知っているだけに、耐え难い悲しみであります。皆さんも世界中の研究者仲间と交わり、よりよい世界を筑くための活动に参加してください。
以上、皆さんが庆应义塾において、高度な専门性(虫の目)、豊かな教养と俯瞰力(鸟の目)と、世界レベルで社会の流れを読む力(鱼の目)を磨き上げること。そして、学问という万国共通の兴味を駆使することで、国境という概念を越えて世界と交わり、これからの50年间の社会の発展に世界中の人たちと手を携えて进めていくことを期待して私の式辞と致します。本日は诚におめでとうございます。
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